だからこそ、太郎よ。

まぁまたちょっと愚痴で申し訳ないが。

実は色々あり、最近居住する市から《太郎君の入浴の時にヘルパーさん二人に来て貰ってもいいよ》という許可がおりた。
太郎はまだ学生なのでその申請はなかなか難しかったのだが、私の腰の悪化もあり許可して頂いたのだ。
本当に有難いことこの上ない。

私は太郎の入浴の時間帯、夕方は毎日神経痛が酷い。
なのでそこを手伝って頂けると随分腰が楽だ。

だが二人介助OKとは言え、当然事業所さんの人員的な問題もある。
現在2つの事業所に来て頂いているが、一つの事業所から二人でもいいし、2つの事業所から1人ずつの派遣でもいい。
なので3回の入浴の内、一回は各事業所から1人ずつ来て頂いている。

以前書いた《ちょっとアレ》なヘルパーさんは辞めると言いながらも、結局平日は別のところで働き週末だけはそのまま今の事業所で働くということになったようだ。
で、週末はアレなヘルパーさんと、もう1つの事業所のヘルパーさんで来て頂いているのだが。

先日そのペアでの入浴中。
たまたまタオルを取りに洗面所に行った私が聞いたのは、太郎が言った
《…落ちる…》
という言葉だった。
その言葉に被せるように、アレ(もはや呼び名がアレ:笑)が
《大丈夫やで!目つぶっといてな!》
と言っていた。
新しいヘルパーさんは洗髪をしているようだった。

太郎が《落ちる》って言うのは珍しい。
ということは、今椅子に座っている姿勢や片側でアレが支えているその支え方が太郎にしてみれば怖いのだろう。

そう思ったけれども私はお風呂場を覗かなかった。さすがに男性が二人いるし、転倒させはしまい。
それにあまり細かい口出しは良くないなと思う。二人が二人のやり易いやり方を見つけていって欲しいな、とも思うし。
けれど正直、上がってくるまでかなり不安だった事は否めない。

しばらくして入浴を終え、着衣も終わった時にアレが
《今日ね、太郎君がシャワーの時に怒ってギャーって叫んだんです》
と言う。
私は
《珍しいね。太郎はお風呂好きやのに》
と答えた。
《そうなんです、でもちょっと原因がわからないんで…》
と言ったアレに
《考えられるのは、支えてる人の支え方が不安定やったか、座りが浅くて太郎のお尻が椅子に収まってなかったか。》
と言うと
《いや、そんなことはありません》
とキッパリ言い切った。

言い切ったんだぜ?

《じゃあシャワーの当て方かな?頭や顔を流す時にずっとシャワーを当て続けていたら、太郎は息をするタイミングが分からないから。それかな?》
と言うと
《いや、そんな事もないと思います》
と、これまたキッパリ言い切ったのだ。

キッパリ言い切るのが好きだな(ㅍ_ㅍ)

アレにしてみれば新しいヘルパーさんより太郎に関しては自分が先輩な訳で、入浴に関しては自分の方が全部知っているのだという自負やプライドもあるのだろう。
先輩風も吹かせたいようだし。

私はさっき太郎が《怖い》と言った言葉を聞いていた事は黙っていた。
今ここでそれを言うとアレの顔を潰すのかな、と思ったからだ。

私とアレのやり取りを新しいヘルパーさんは不安そうに聞いていた。
一歩も譲らないアレに業を煮やし《じゃあ、次回もう一度私も一緒に入ります。そこで見てみるね》と告げる。
新しいヘルパーさんは明らかにホッとした顔で《お母さん、是非ともお願いします!》と言ったが、アレは明らかに《え?またお母さんが入るのか?(•́_•̀٥)》と複雑な顔だった。
見られるのは嫌なのだな。


で、その次の入浴の時。

前回と同じくアレが太郎を支え、新しいヘルパーさんが洗髪から始めた。

余談だが新しいヘルパーさんの事業所さんは、皆本当に丁寧だ。
いや、アレの事業所も他の方は本当に丁寧だし、気配りにも頭が下がる。
だからこそ際立つアレな訳だが。

丁寧なヘルパーさん達は洗顔一つでも「男子はここがどうしても…」と時間をかけてTゾーンや耳の後ろも丁寧に洗ってくれる。
きっと初めてそれを見たアレは驚いただろう。
自分のやり方が余りにも雑であった事に気付いただろうから。
だからなのか、面倒な事はしたくないからなのか、そのペアの時にアレは必ず支える方に回っている。

そう言えば浴後の着衣の時もアレが苦手なオシメを着けるのはさり気無く《じゃあお願いします》と新しいヘルパーさんにやらせているな。
本当に人間性が垣間見える瞬間だ。

太郎の身体を支えているアレに
《その支え方では太郎は怖いから、自分の身体の大きい面を使って支えてほしい》
と言うと
《あ、わかりました》
と言う。
言うのだが、別の何かに気を取られるとその手がおざなりになり、太郎は不安そうな顔になる。
《この場面で太郎が自分の左手で椅子を握っていたとしても、やっぱり彼は自分の身体をどう支えていいのか分からないので支える側がしっかり支えてくれないと怖いと思う》
と言うとその時だけはしっかり支える。

結局、注意力が持続しないのだ、アレは。
今自分がしっかり支えておかないと洗体をしているもう一人が非常に困るなとか、最悪の場合太郎が椅子から転倒するのだという危機感が全くないという事なのだなぁと思いながら見ていた。

そしてシャワーも案の定、頭にずっと当て続けていた。
《それじゃあ太郎が息継ぎできない》
と言うと、今度はちょっと流してはしばらく外す、を繰り返す。

…いやいや(¯∇¯٥)

《しばらく当てて、様子を見ながら息継ぎが出来るくらいの間隔でシャワーを外してみて?》
と言うのだが、なかなか上手に出来ない。

思わず途中で「代わって!」と言いそうになった。
グッと飲み込んだけど。

入浴が終わり
《今日は前回と全然違って、太郎君が落ち着いて入れていました!》
と新しいヘルパーさんが言う。
そりゃそうだ。

サービスが終わるとその場で記録を書いている新しいヘルパーさんを残して《失礼しました》もなく《それじゃあ》とだけ告げてアレが先に帰ってしまうと、最初は新しいヘルパーさんは非常に困惑した顔をしていた。
当然だろう。
時間はまだ余っている。
《頂いた時間は目一杯何かをさせて頂きたい》
と常々言ってくれる新しいヘルパーさんにしてみれば、アレのやることなすこと疑問符しかないだろう。
でもヘルパーって本当はそういう仕事なんだけどな。

だが新しいヘルパーさんにしてみれば、アレのことは同業者であり他事業所のヘルパーさんであるが故になかなか思うことをそのまま表現は出来ないと思う。

なので私から話を振ってみた。
色々なことをお話する。
新しいヘルパーさんは非常に納得されていた。


本心ではアレは訪問のサービスには本当に向いていない人だと思うし、私のストレスになるので出来ればいつか違う方にお願い出来たらいいなぁと思ってはいる。

けれど貴重な男手でもあり、何より太郎はアレのことが大好きだ。

私は決して彼の人間性を否定している訳ではない。
良い人なのだな、と思うことも沢山ある。

けれどもヘルパーという仕事は、決められたことだけを流れのままにやればいいってもんでもない。
何を尊重しながら仕事をするのか、目配り気配りは必須だし、目の前にいる利用者にとって一番良いと思われるやり方を自分で探らなければいけない。
ラッキーなことに母親がすぐ近くにいるのだ。何でもすぐに聞くべきだろう。
そして自分にとってのこの仕事をする上でのプライドはどこにあるのか、そこだけは忘れてはいけないと思うのだ。

私が介護職から一旦離れようと思った原因は、勿論腰のこともあった。
けれども実はアレのような人達に散々悩まされ、なのにアレのような人達がのさばっている業界にうんざりしたということも大きかった。
勿論熱意と情熱を持ち仕事に向かっている方々も沢山居る。そんな方達が懸命に頑張るのと比例して、アレのような人達も何故かどんどんのさばっていく。そして結局熱意と情熱のある人達が疲れ果ててしまい、業界を去るのだ。
その状況を目の当たりにしすぎて、本当に私はうんざりした。
いや、私の周りにだけ特に多かったのかもしれないが。


サービスを受ける側になり、改めて色々なことを思う。働く側の気持ちもわかる。受ける側がどこを見て何を思うのかも良くわかる。

太郎がいつか家以外の場所で生活をする時に、周りに居る支援者は選べない。
アレのような人も沢山居ると思う。

だからこそ。

だからこそ太郎よ。
もっともっと沢山の言葉で自分のことを表現出来るようになろう。
介護者の言葉だけではなく、太郎自身の言葉でその時にあった出来事や気持ちを表現出来るようになっておこう。

拙くてもいいから。

太郎の寝顔にそう言った。






















Commented by chico-plus2018 at 2018-12-29 11:43
アレ、、、笑、、、
でも、すんごくわかります。
私もお客様と密に関わるサービス業でしたが、真面目な一生懸命お客様の事を考えて仕事する子は、どんどん辞めていき、辞めてほしい子は残るという、、、何でしょうね、この負のスパイラルは。

太郎くんも言葉にしてるのに、、、
『落ちる、、、』とか『怖い』まで。
この言葉拾えなかったら介護職に就く者としてアウトではないでしょうか。
気づけや、アレよ、、、okanさんが優しいうちに。

あぁ、、だめだ、笑、私の周りのアレな人も今日から『アレ』と呼んでしまいまふ。。。笑
Commented by ganbaru-okan at 2018-12-29 19:32
> chico-plus2018さん
呼びましょう、アレと(笑)
これからは合言葉にしましょう(笑)

感性って凄く大事だと思うんですよ、人相手の仕事って。
でも感性って元々持ち合わせていなければなかなか難しいですもんね…( ・᷄ὢ・᷅ )

きっとどの職場でも多かれ少なかれあることなのだと思いますが、アレに振り回される周りは本当に迷惑以外の何者でもないですよね。
つくづく難しいなぁと思います…。

アレは(←笑)

Commented by mashiro507 at 2018-12-30 08:30
アレ、、辞めてなかったんだー(°ω°)!←それも驚いた(笑)

新しいヘルパーさんも物申したい事いっぱいやろなぁ💦
初めての共同作業(笑)の日は、モヤモヤして帰っただろうに…

うちにも面倒な仕事は文句を言えない他の人へ…って回す人がいるよ🌀
あれって周りが気づいてないとでも思ってるのかね?
そんな人ほどなかなか辞めねー(*꒪꒫꒪)チーン

「落ちる」とか「怖い」って意思表示をしてるのに、軽く流されるとかあってはいけない事よね。
変な自信…後々トラブルに繋がりそうやから本当アレの方が怖い:(´◦ω◦`):
Commented by m-kumatta at 2018-12-30 09:51
切実な話なのに申し訳ありませんが。
アレと出てくるたびに笑ってしまいました(^^ゞ

私、こう見えても(って、見たことないか)結構いろいろ小説を読むのですが。
なかでも一番好みというか、すごいなあって思うのが、悲劇を喜劇で表現できる人、なんです。
okanさんのお話からはその感じがすごく出ていて、だから私はokanさんのブログが大好きなんだなあと、今日の記事を読んで妙に得心した次第です。
あ。okanさんのことを悲劇だと言ってるわけでは決してないですよ。そこのところはどうぞ誤解なきよう<(_ _)>
Commented by ohisamahappy at 2018-12-30 15:43
アレ、辞める辞める詐欺だったんですね…。
まぁ、アレでも人手としては一人だというのも、現実ですもんね。

私も、介護職ではないのですが、福祉の仕事をしています。
okanさんのおっしゃる業界あるある、よくわかります。

アリの話ですが、働きアリの5%くらいはサボっているんですってね。
で、サボる働きアリを排除すると、やっぱり5%程度のアリがサボるようになるらしいです。

この話を知って、私は何かを悟りました(笑)
Commented by ganbaru-okan at 2018-12-30 18:24
> mashiro507さん
そうよ!実は辞めてなかったのよ!
びっくりでしょ?(ㅍ_ㅍ)

本当にね。
多少のことなら私も言わない。
ちゃんと目をつぶるんだけどね。

なかなかに、なかなかすぎてこれがもう…(´×ω×`)

言葉を選んで説明しても聞いちゃーいねぇ。

どうしたもんだかねぇ…。
太郎が怪我でもしなきゃわかんないのかなと思ったりもするよ。
Commented by ganbaru-okan at 2018-12-30 21:51
> m-kumattaさん
いやいや、決してそんなに誉めて頂くようなブログではございませんが(・∀・;)
ただねぇ、現実をありのままに書いてしまうと全くもう笑えないじゃないですか(笑)
なのでちょっとだけは柔らくしてみようとはちょっとだけ努力してみたりもしております。

アレのネタはまだまだまだまだ続くと思われますので、まだまだまだまだお付き合い下さいませ。
Commented by ganbaru-okan at 2018-12-30 21:54
> ohisamahappyさん
そうなんです!辞める辞める詐欺だったんですっ!ここにも1人いました(笑)

でもその通り、アレも貴重な人手な訳でね。アレの所属する事業所さんは本当にさぞや複雑なお気持ちだろうなぁと思うんです。人手としては必要、だけどサービスに行かせたらアレだし……(笑)

業界あるある、お分かりいただけて本当に嬉しいです(笑)
あのあるあるを口にすると反発を買う(これは主にアレ達に:笑)か《福祉職の方々は皆素晴らしい人格者》と信じて疑わない方々からは「そんな筈がない」と言われてしまう訳ですが。

あぁ この部分、もっともっと書きたいです←(いつか書くぞ、と。笑)

因みにアリの話ですが
私も以前それを聞いた時にやっぱり何かを悟った気がしました(笑)
by ganbaru-okan | 2018-12-28 16:35 | 色々思う事 | Comments(8)